【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

 それに、ランティスがあんな風に、愛しげに、優しげに視線を向ける相手など、メルシアしかいないこともベルトルトは理解している。

 ようやくパズルのピースがはまったようだと、ほんの少しの安堵をベルトルトが感じたのも事実だった。

「……はぁ。わかりました。しばらくは、休暇を取って下さい」
「……だが、問題が起きたのだろう?」
「今のあなたがいても、足手まといです。問題が起こったのは事実ですが、俺が処理しておきます。ああ、隊長代行の書類だけ貰えますか? ここにサイン下さい」

 用意されていた書類。
 父である先代騎士団長だけでなく、国王陛下のサインまで入った書類。
 用意周到であることから、あらかじめこの展開を予想していたのではないかとさえ思える。

 ランティスは、いつだって、なんだかんだ文句を言っても、誰かを見限ることや、困っている人間を見ないふりすることができない、お人好しのベルトルトの背中を見送った。
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