【甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。】番外編その2「バー・アズリッシモにて」

***

「櫂と何、話してたんだ?」
 それから20分ほどで、亮介さんは目を覚ました。
 わたしたちはタクシーで家に帰ることにした。

「亮介さんと栗原さんの馴れ初めを」

 亮介さんはまたぷっと吹き出した。
「だから、そんな言い方するなって。背中、ぞわぞわするから」

 わたしは彼を見て微笑み、それから肩に頭をもたせかけた。
 そうやって、自分から彼に甘えるようなことをしたのは、はじめてかもしれない。

 亮介さんはちょっと驚き、それから嬉しそうな顔でわたしの手をそっと握った。
 わたしも彼の手を握りかえして、
「亮介さんに出会えて本当に良かったって、そう思えることを教えてくれたの、栗原さん」

 彼はぎゅっと手を握り、そして言った。
 「帰したくない。行先、俺の家でいい?」
 わたしはゆっくり、頷いた。

 車窓を流れる、幻想的な光の帯を見つめながら、こうして彼のそばにいられる幸福を改めてかみしめていた。
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