【甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。】番外編その2「バー・アズリッシモにて」
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「櫂と何、話してたんだ?」
それから20分ほどで、亮介さんは目を覚ました。
わたしたちはタクシーで家に帰ることにした。
「亮介さんと栗原さんの馴れ初めを」
亮介さんはまたぷっと吹き出した。
「だから、そんな言い方するなって。背中、ぞわぞわするから」
わたしは彼を見て微笑み、それから肩に頭をもたせかけた。
そうやって、自分から彼に甘えるようなことをしたのは、はじめてかもしれない。
亮介さんはちょっと驚き、それから嬉しそうな顔でわたしの手をそっと握った。
わたしも彼の手を握りかえして、
「亮介さんに出会えて本当に良かったって、そう思えることを教えてくれたの、栗原さん」
彼はぎゅっと手を握り、そして言った。
「帰したくない。行先、俺の家でいい?」
わたしはゆっくり、頷いた。
車窓を流れる、幻想的な光の帯を見つめながら、こうして彼のそばにいられる幸福を改めてかみしめていた。