国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 ようは、この扉は鍵を使って開けるしかないということだ。
 だが、その鍵が手元に無い今、どのようにしてこの鍵を開けるべきか。
 ブレナンはクリスが行おうとしていることに勘付いていた。そしてそれが、なかなか難しい術式であることにも。
 じわりと、端正なクリスの額に汗が浮かぶ。じっとクリスが動かずそのまま鍵穴を睨みつけていると、カチッという金属音が鳴り響いた。
 ふぅと彼が大きく息を吐いたことで、その金属音が示す結果を誰もが察する。
 アダムが扉のノブに手をかけると扉はすんなりと開いた。
 重い扉は、錆びた音を軋ませながらゆっくりと開けられた。
「よくやった、クリス殿」
 ブレナンがぽんとクリスの肩を叩いてみる。
「いえ、まだです。恐らくフローラたちはこの奥の冷牢にいるはず。相手が彼女たちの命を狙っていると仮定したのであれば、ですが」
 そこでブレナンは眉根を寄せた。
「もしかしたら、今頃、冷牢の中で水の中に、ということか?」
「そういうこともあり得るかもしれない、ということです。とにかく中へ」
 アダムたちが慌ただしく中に入ったその後に、クリスとブレナンは続いた。じっくりと宝物庫の中を確認してみるが、ここに人がいそうな気配はない。
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