国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 ふふっと笑うクリスが、少し恐ろしくも見えた。時間稼ぎをするかのように、ゆっくりとお茶を飲んでいたフローラだったが、最後の一口を飲み終えると、それを見計らったかのようにクリスが立ち上がった。
「急がせて申し訳ないですね。それにこのままでは、お昼ご飯を食べ損ねてしまいそうです。そうなったら、午後からの仕事は免除してもらうしかありませんね」
 クリスが会議のためにこの研究室を出たのは十の刻の頃。そこから、三十分ほど過ぎた頃、フローラの魔力の位置が変わったことに気付いた。そして、その一時間後にはなんとかジェシカとフローラを救出したわけだが、今はすでに十二の刻を過ぎている。朝ごはんも満足に食べていないフローラは既にお腹が空いている。今にもお腹と背中がくっつきそうなくらいお腹が空いていて、ぐぐぅとお腹が鳴るかもしれない。
「お腹が空きすぎて、お腹が鳴るかもしれません」
 フローラが口にする。
「では、いつものように美味しい甘いお菓子を準備してもらう必要がありますね」
 一体、どこに連れていかれようとしているのか。
「さあ」
 クリスがいつものように手を差し出してきたため、フローラは迷うことなくそれを手に取った。
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