国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「はい」
「そう指示したのは私ですが」
「はい」
 クリスはあの場にいた人間を瞬時に思い浮かべた。光魔法の使い手の魔導士二人、それからフローラの同僚の女性騎士。監視部屋であの女を監視していた騎士が他に四人。それだけの人数に口止めを頼むのか。それにしても人数が多すぎる。
 先ほどの部屋、つまり重鎮たちが利用する応接室に戻ると、そこには錚々たる面々が連なっていた。
 フローラに視線を向けてきたのはノルトとブレナン。間違いなく彼女がしたことに気付いている。
「どうだった?」
 そう尋ねてきたのは、この状況を察することのできないアダムである。
「少し興奮されていたようでした」
 フローラが答える。
「それで、必要な証言は得られたのか?」
 それに対して、フローラは首を横に振った。
「そうか」
 アダムは腕を組み、表情を曇らせた。
「クリス」
 重く声を発したのはノルトだ。
「封じたな?」
 その一言で理解したのはクリスとブレナンである。
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