国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「恐らく。彼女が目覚めないとわかりませんが」
「そうか。だが、この状況ではもう隠し切れないぞ? いいのか?」
「それを承知したうえで、彼女に頼みました」
「そうか」
 ノルトは深く頷いた。
「クリス。お前はフローラ嬢を連れて戻れ。今日はもう休んでもいいぞ」
「では、お言葉に甘えて」
 ここに来たにも関わらず、座ることなく立ち去ろうとする。恐らくフローラは今の会話で状況を察するほど、現状を理解しきれていないだろう。
「フローラ、戻りますよ」
「あ、はい」
 クリスの声に驚いたフローラ。周囲をきょろきょろと見回してから、頭を下げる。
 クリスはフローラを連れて部屋を出る。
「お腹、空きましたよね」
 扉がパタリと閉められたところで、クリスがふっと笑った。
「そうですね。お腹、空きましたね」
「では、あなたの家に向かいましょうかね」
 フローラはクリスを見上げた。だが彼は楽しそうに笑っているだけである。
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