国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 フローラからジェシカに言えることは、何も無い。クリスからももちろん、何も言えない。
 そのとき、フローラのお腹がぎゅるると鳴った。
「やだ、フローラ。お昼ご飯、食べてないのね?」
「ジェシカ様は?」
「私? さっき、少しだけ食べたから」
「そうですか。それなら、安心しました」
 そうフローラが口にしたのも、ジェシカの気が落ち込んで、食欲も無かったらということを心配していたからだろう。
「フローラ、もう、戻っていいわよ。さっさとクリスを連れて帰って。あれがいたんじゃ、ゆっくり休めないし」
「では、また来ますね」
「そのときは、クリスは置いてきてね。あ、あなた、今日で休暇が終わりよね。明日から、またよろしくね」
 承知しました、とフローラは頭を下げるが、クリスは黙ってその様子を見ているだけだ。
 挙句「さっさと行きなさいよ」とジェシカにしっしつと手を振られているクリス。
 それでもフローラには笑顔を向けるジェシカなので、知らない人が見たらこの二人の間には何があるのだろうと、首を傾げたくなることだろう。
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