国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「なんだ」
 冷静を装って尋ねる。
「その……。クリス様が、私はきちんと魔法の教育を受けた方が良いとおっしゃってくださいまして」
「魔法の教育……」
 その言葉でアダムは思い出す。今では魔法騎士と呼ばれている彼女であるが、そこまでの道のりが異例中の異例だった。
 元々はこの国の第一王女であるジェシカの護衛騎士として採用された。それは学生時代の成績が、女性の中でもずば抜けてよかった。いつも、人と話をするときは、おどおどとしている彼女であるが、護衛対象であるジェシカと一緒にいるときはまるで別人かのようにきびきびとしている。お前、本当にあのフローラか、とアダムさえも何度も目も耳も疑った。
 そんな彼女が一年前、貴重な魔法騎士であるブレナンに声をかけられたのがきっかけ。
『フローラ。最近、君から少し魔力を感じるのだが、魔法付与をやってみないか』
 ブレナンは魔法騎士の中でも一番の古株だ。そんな彼だから気付いたのかもしれない。フローラの異変に。とりあえずブレナンが見本を見せると、フローラが真似をした、らしい。というのもその場にはブレナンしかいなかったから、アダムにとっては彼から聞いた話。
 真似をしたフローラは見事、その武器に水の魔法付与をやってのけた。それに驚いたのはフローラ本人よりもブレナンの方。すぐさま他の魔法騎士達も呼び寄せ、彼女についての相談が始まった。他の魔法騎士も、じゃ、これを真似してみて、と言うと、フローラはその通りに真似をする。
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