国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「離して。もう、サミュエルとは終わったんだから、私が他の誰と付き合おうが勝手じゃない」
 やめて。
 離して。
 それを何度も言いながら、彼の腕を振りほどこうとするフローラだが、同じように騎士であるサミュエルに力で敵うわけもない。
 最後の手段で、クリスに教えてもらった魔法を放とうかとも考えていた時、そのサミュエル目掛けて鋭い風が当たった。
「いてっ」
 思わず彼女を掴んでいた手を離すサミュエル。
「まったく、男の嫉妬とは見苦しいですよ」
「クリス様」
 思わずフローラはその魔法を放った人物の名を呼んでしまった。嬉しさがじんわりと込み上げてくる。
「なんだ、お前は。お前には関係ないだろ」
 手首をさすりながら、サミュエルが怒鳴りつける。
「残念ながら、関係あるのですよ」
 クリスはゆっくりとフローラに近づき、彼女の腰に手を回した。
「彼女の相手は私ですからね」
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