国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「私たちの相性は95パーセントという数値が出ていますが、それは恐らく身体の相性も含めてだと思うのです」
「あ、はい。そう、かもしれませんね」
「ですから。今日は口づけ以上のことをしてもいいですか?」
 クリスは思わずそう尋ねていたし、それを耳にしたフローラはその言葉に頷くものの、どこか身体には力が入っていて、それを拒絶しているようにも思えた。
 拒絶、というよりは恐怖。
「もしかして、怖いのですか? あなたも初めてではないと思っているのですが」
 それは、結婚を考えていた男性がいた、つまりあの野郎と付き合っていただろうし、あの野郎がそのようなことを口にしていたし、今までの彼女との会話からも匂ってきた内容。
「え、と、まあ……。クリス様のおっしゃる通りです」
 それでもフローラの肩が微かに震えていたので、クリスはそっとその肩を抱き寄せた。
 フローラはその頭を彼の胸に預ける。ドクドクという彼の心臓の音が聞こえた。力強くて、そして少し速い。
「私も緊張しています。あなたという運命の女性を抱くことができるという喜びで。あなたが何に怯えているのか、教えていただけませんか?」
 クリスの優しい色の目に見つめられたフローラは、今までのサミュエルとのそれについて、ポツリポツリと話し始めた。
 つまりのところ、フローラはそれが嫌いだということ。
「恐らくあなたがそれを嫌いなのは、あなた自身が気持ちよくなったことがないから、なんでしょうね」
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