国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 二人は食事を終えると、ゆったりと休めるようにソファの方へ移動した。フローラはお茶とお菓子を用意して、その前のテーブルの上に置いた。
「至れり尽くせりですね」
 クリスは目の前におかれたカップを手にし、目を細めて微笑んだ。隣にはフローラが緊張した面持ちで、ちょこんと座っている。
「あまり、その、日持ちしないような食料は置いておけなくて。その、このようなものしか無くて悪いのですが」
 このようなものを指しているのは、恐らく日持ちする焼き菓子のことだろう。
「お気になさらず。何を食べるかよりも、誰と食べるかが重要なのです」
 クリスのその言葉に、フローラの心はぽかぽかと温かくなると同時に、少し恥ずかしくなった。
 なぜ恥ずかしいと感じたのか。その言葉に喜んだことが恥ずかしいのか。よくわからない。
「私は今、こうやってクリス様と時間を共にすることができて、嬉しいです」
 そう言う彼女は、クリスの隣で背筋をピンと張って両手を膝の上に揃えている。
「フローラ。もしかして緊張していますか?」
「あ、はい。その」
「先日、お会いしたときにも言いましたが。私はあなたと口づけ以上の関係になりたいと思っています」
 その言葉にフローラはこくりと頷く。
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