国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
11.私の愛おしい人
「あの、これは使わなくてもよろしいのでしょうか」
 ごそごそとフローラが寝台の脇にある棚から取り出したのは、巷で噂の香油の瓶。
「このようなものに頼らなくても大丈夫ですよ」
 彼女が手にしていた瓶をクリスは優しく奪うと、ポンと投げ捨てた。それは綺麗に放物線を描いて絨毯の上に落ちるが、しっかりと蓋はしめられていたようで、絨毯の上で不規則に揺られ、最後にチャポンと音を鳴らして止まる。
 寝台の上では、男女が向かい合って座っていた。しかもフローラにいたっては膝関節をしっかりと曲げ、その足の裏の上にお尻を乗せている。つまり、正座である。それは、これから起こるであろうことを受け止めるための心構え、ということか。
「大丈夫ですよ。あのようなものに頼らなくても、あなたの身体は私を受け入れてくれるようにできていますから」
 クリスは嬉しそうにニッコリと笑うと、フローラの肩に優しく手を添え、唇を重ねた。そのままゆっくりと彼女を後ろに押し倒す。彼はそれとなく、曲げられていた彼女の足を伸ばすように誘導した。さらに、その彼女の足の間には、自分の身体をしっかりと滑り込ませた。
 フローラは、クリスにされている口づけに応えることで精いっぱいだった。
「んっ」
 クリスは何度も角度を変えながら唇を合わせる。ふとそれが離れた瞬間に、フローラからは甘い息が漏れ、口の端からは唾液も漏れ始める。
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