月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

婚約破棄

「クリスティナ・ダールグレン! お前はこのセーデルルンド王国の第一王子であるこの私の婚約者でありながら、ゴロツキ共や賤民達と懇意にしているそうだな?! そんな賤しい女は王妃に相応しくない! お前との婚約は解消させて貰う!」

 セーデルルンド王国が誇る最高教育機関であるブレンドレル魔法学院の中庭に、この国の第一王子であるフレードリクの声が響き渡る。

「しかもお前が自分を<聖女>だと詐称している事はわかっている! 魔力が少し多いぐらいで<聖女>を自称するとは恥を知れ! <聖女>とは高潔で慈悲深い女性でなければならない! この国の王族である私、フレードリク・スラウス・セーデルルンドの名のもとに、下賤なお前から<聖女>の称号を剥奪する!」

 フレードリクが言う<聖女>とは、この国を魔物から守る結界を張り、<瘴気>を浄化する<神聖力>を持つ者のことだ。

 <神聖力>は、この世界を創造したとされるラーシャルード神を崇拝する神殿の神官や巫女達が修行の末、神から与えられる力であったが、たまに聖職者以外の子供から生まれることがあった。

 現に当代の<聖女>──クリスティナ・ダールグレンは庶民の出で、その<神聖力>の強さから、神殿に<聖女>として選ばれた少女であった。
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