月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
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ティナとアネタが遊んでいると、トールが大量の薪を持って帰ってきた。
「トールお疲れ様。重くなかった?」
「うん。これぐらいなら大丈夫」
ロープで器用に巻かれた薪は、朝まで焚き火しても十分足りるぐらいの量だった。設営の時の手際の良さといい、トールはかなり野営に慣れているようだ。
「はーい! おまたせ!」
タイミング良く料理が完成したようで、イロナが次々と料理をテーブルに並べていく。
テーブルに並べられた料理はティナが見たことがない料理で、全体的に赤いものの、野菜がたっぷりと使われ、とても色鮮やかだ。
見るからに辛そうな料理も中にはあるが、妙に食欲を掻き立てられる香りが漂っている。
「うわぁ……! すごく美味しそう!! どこの地方料理なんですか?」
「これは南の方にある小さな国の民族料理よ。どこの国かわかるかしら?」
「え? え? えーっと?」
「エヴェルス国の料理ですね。香辛料を多く使うと聞いたことがあります」
「あら、トールくんは物知りね。即答されるとは思わなかったわ……残念」
イロナが冗談めかして肩を竦める。ティナもトールが優秀なのは知っていたが、馴染みがない国の料理まで知っているとは思わなかったらしい。