月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
「何だコイツ? 変異種か?」

 モルガンも初めて見る魔物だったらしく、珍しそうにマジマジと魔物の子供を見ている。

「結界に触れて燃えていたはずなのに、どうして無事なんだろう?」

 トールが不思議そうに魔物の子供を撫でている。きっと優しい目で魔物の子供を見ているのだろう。
 そんなトールの姿に、ちょっぴり魔物の子供が羨ましいな、とティナは密かに思う。

 それはさておき、確かに悪意がない魔物であれば、結界に触れても問題なく入ってこれる。
 しかし、この魔物の子供が結界に触れた瞬間、確かに炎が上がっていたのだ。
 それはこの魔物の子供が瘴気を纏っていたということに他ならない。

「うーん、多分だけどこの子、瘴気にあてられていたんじゃないかな」

 魔物の子供が何かしらの原因でたまたま瘴気を浴びてしまい、たまたま張ったばかりの結界に触れ、結界がたまたま瘴気を浄化してしまったのではないか、と言うのがティナの仮説だ。

「なんかすげぇ偶然だな」

「もしティナの仮説通りなら、この辺りに瘴気溜まりがないのはおかしいんじゃないかな。俺が薪拾いに行った時はそんな気配しなかったよ」

「……そうだよね。私も怪しい気配は感じないし……。じゃあ、この子はどこで瘴気を浴びたんだろう?」
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