月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
「──っ」

 上気した頬に潤んだ瞳のティナはやけに扇情的で、その色香にトールの理性がクラっとなる。
 正直、魔力が枯渇しかかっているトールに、今のティナはすごく目の毒だ。

 トールは鉄壁を誇ると自負している自分の理性が、簡単に崩れそうになっているのを自覚してしまう。

 そんなトールの状況を知らないティナが、トールの手に触れようとした時、突然トールがティナを強く抱きしめ、その場に押し倒した。

 驚きで見開いたティナの目に、光の矢が映る。
 それは、さっきまでトールがいた場所を通過する軌道を描いていて──。

「──クリスティナ様っ!!」

 見覚えがある魔法に、聞き覚えのある声を聞いたティナが、混乱しながら顔を向けると──。

 そこには、ラーシャルード神を崇拝する神殿の守り手で、聖女を守護する役目を持つ聖騎士団団員──アレクシスがいた。
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