月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

冒険者ギルド

 クリスティナがしばらく歩いていくと、交差した剣と杖に盾のマークが入った看板を掲げている大きな建物が見えてきた。

 その建物が世界中に拠点がある、冒険者ギルドのセーデルルンド王国王都本部だ。

 冒険者ギルドは世界各国に本部や支部を設けているが、どの国のどの機関にも属さない独立した組織となっている。

 この王都本部は、セーデルルンド王国各地にある支部を統括する役目も担っており、最高責任者のギルド長ともなれば、かなりの権力を持つこととなる。

 どことなく威厳があり、一般人が立ち入りにくい雰囲気を醸し出しているギルドの重厚な扉を、クリスティナは勝手知ったる様子で開き、軽い足取りで入っていく。

 冒険者達で賑わっていたギルドのホールだったが、クリスティナが足を踏み入れると、その姿を見た冒険者達が一斉に驚いた表情を浮かべた。

「おいおい、ティナ! 白昼堂々とこんなところに来てどうした?」

「王宮や神殿にバレたらヤバいんじゃないのか?」

「ティナちゃんどうしたの? いつもと様子が違うわよ?」

「制服のままだし、素材の換金に来た訳じゃねぇよな?」

「珍しいな、学院をサボってきたのか?」

 クリスティナを心配した冒険者達から次々と声が掛かる。
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