月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

追跡

 ベルトルドに会うため、ギルドを訪れたアレクシスだったが、ギルドの受付に面会依頼をにべもなく断られてしまう。

 何とか面会をと粘ったものの、全く取り付く島がない。しかも周りの冒険者たちがアレクシスを見る目はかなり冷たい。

 アレクシスはギルド中の人間から冷たい視線を向けられ、仕方なくギルドを後にしたが、だからこそ確信が持てた。

 ──クリスティナは絶対にここにいる、と。

 ギルド中の冒険者が聖騎士であるアレクシスに対し、悪感情を持っていたのが良い証拠だ。
 緘口令が敷かれ、市井の人間が知り得ない学院での出来事が、恐らくクリスティナからギルド中に伝わったのだ。

 クリスティナは瘴気浄化の巡業へ行く度に、こっそり魔物を狩っていた。それは彼女がギルドに行くための口実だったのだろう。

 クリスティナはベルトルドに酷く懐いていた。そしてベルトルドも彼女を可愛がっていて、再三神殿にクリスティナの処遇について苦言を呈するほどだった。
 神殿に文句を言える人物など国王ぐらいのものなのだが、ベルトルド自身が凄腕の実力者で、しかも権力まで持ち合わせていたため、彼は神殿にとって敵に回したくない人物だ。
 そんなベルトルドが統括するギルドは、聖女の称号を剥奪されたクリスティナに格好の隠れ家となるはずだ。
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