月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
 一体いつ魔物を狩り、ギルドに出入りしているのかわからなかったが、時々、夜中にクリスティナの姿が見えないことがあったので、きっとその時だろうとアレクシスは当たりをつけていた。

 本来であれば、主であるクリスティナから目を離すなどもっての外であったが、クリスティナは忽然と姿を消してしまうのだ。
 恐らく<結界>の応用魔法を使用しているのだろう。そうなればクリスティナが術を解かない限り、見付けることは不可能だ。

 きっと今回も<結界>を使用し、姿をくらませたに違いない。

 アレクシスにはクリスティナの行動を逐一報告する義務があったが、彼は敢えて報告しなかった。それは彼女に少しでも羽根を伸ばして欲しかったからだ。

 そうしてしばらくの間、アレクシスはギルドを見張っていたが、一向にクリスティナの気配がないことを訝しんだ。

 <結界>を使われていたらそれまでだが、捜索網が張り巡らされている状況で、クリスティナも無闇矢鱈に魔法を使ったりしないはずだ。
 もし彼女が魔法を使えば、魔力を感知した聖騎士たちが速攻、身柄を保護するために動く手筈になっている。

 しかし神殿にも王宮にも未だクリスティナ発見の知らせは入っていないし、それらしき人物が王都の城壁を通過したという連絡もない。

 ならば、クリスティナは未だ王都の、それもギルド本部に滞在しているはずなのだが……アレクシスは何かが引っかかった。
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