月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
 フロレンツはトールヴァルドの笑顔に、やはりこの優秀な弟には敵わないな、と思う。

「……ああ、任せてくれ。アーデルハイトと共にこの国を守ると誓うよ」

 フロレンツは万感の思いを込めてトールヴァルドに誓う。その瞳には揺るぎない決意が見て取れる。

「だからトールは安心して彼女を探しに行けばいい。早く会いたくて仕方がないんだろう?」

「……っ、ありがとうございます。時間がかかっても必ずティナを見つけて連れてきます。その時は兄上に彼女を紹介させてください」

「楽しみにしているよ。一筋縄じゃ行かないだろうけど、頑張れ」

「──はいっ!」

 国の柵から解放されたトールヴァルドが屈託なく笑う。そんな彼の笑顔を初めて見たフロレンツは目を見張る。

 トールヴァルドには自由が似合う。国に縛り付けておくには勿体無いぐらいに。

 そうして、トールヴァルドは王位継承問題を解決し、大手を振って王宮から飛び出した──ティナとの再会を信じて。
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