月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

面談

 しばらく羞恥心で悶ていたティナだったが、やっと茹だった頭と顔の熱が引いてきたので、ようやくトールの顔を見ることが出来た。

「……ご、ごめん……! 色々考えてたら頭がごんがらがっちゃって……」

 本当はトールを意識してしまい、恥ずかしくなっただけなのだが、あながち間違ったことは言っていない。

「もう落ち着いた? 俺も混乱させてごめん。ティナがこの国からいなくなるって思ったら、つい熱くなっちゃって」

 やっと落ち着いたところなのに、わざとなのか無自覚なのか、またしてもトールが意味深なことを言う。
 それでもティナは、何とかトールの攻撃に持ち堪えることに成功する。

「トールの申し出はすごく有り難いけど、護衛が決まり次第ベルトルド……ギルド長に連れて来るように言われているんだよね。ギルド長直々に面接するって言ってたけど……それでも大丈夫?」

 きっとベルトルドのことだから、余程腕が立つ者じゃないと同行を認めないのでは、と思う。
 いくらトールが鍛えていると言っても、所詮現役の冒険者には敵わないだろう。下手をするとベルトルドが直接試験を行うと言い出すかもしれない。

(もしベルトルドさんが試験をするなら……トールが危ないかも……)
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