月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
隠者
『どうするー? 離れていくけど追いかけるー?』
アウルムが気付いた何者かは、ティナたちがいる方向とは反対側の、森の奥へ移動しているらしい。
「……どうしよう。ただの冒険者かもしれないし……。悪い感じはする?」
『ううんー。しないよー』
もし悪意を持った者がこの森を徘徊しているのであれば、放っておくことはできない。しかし悪意なくただ森を散策しているのなら、ティナたちに害が及ぶことはないだろう、とティナは判断する。
「じゃあ、今は追うのはやめておこうか。私たちもテントに戻ろうね」
この森には人の手が入った形跡がなかったからすっかり油断していたが、全くの無人というわけではなさそうだ。
そのうち誰かと森の中で出会うかもしれないので、ティナは警戒を怠らないようにしなければ、と気を引き締める。
そう考えていたティナだったが、次の日さっそくその人物と遭遇してしまう。
「おやおや〜? 誰か入って来たな、と思ったら、お嬢ちゃんたちかね」
テントをたたみ、再びアウルムと森の中を進んでいたティナは、森の中で小さい小屋を発見する。