月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
決意
訪れた人間の感覚を迷わすといわれる<迷いの森>で、大魔導士であるデュノアイエ──ノアと出会ったティナは、ノアの勧めもあり、小屋に部屋を追加で拡張してもらい、そこでしばらくお世話になることになった。
「えっ?! ええ〜〜?!」
ティナはあまりのことに驚愕する。
ノアが魔法で追加した部屋は、貴族の屋敷並みに広かった。しかもいつの間にか内装も整っていて、まるで貴族令嬢の部屋のようだ。
「どどど、どうしてこんなに部屋が可愛いんですかっ?!」
てっきり宿に泊まる時のような小さい部屋に、野営で使うマットや毛布を敷いて寝床を作るのかと思っていた。
それなのに、部屋の中を見てみれば天蓋付きのベッドに高級そうなソファーや、調度品がセンスよく配置されているのだ。
しかもクッションやカーテンなどのファブリックも妙に可愛らしい。
アウルム用のベッドまで用意されていて、至れり尽くせりだ。
「ふぉっふぉっふぉ。ワシは大魔導師じゃからのう」
「いやいやいや。だからって一瞬でこんな部屋を完成させるなんて、あり得ませんって」
ノアはインテリアのセンスまで大魔導士級なのだろうか……。ティナはだんだん規格外のノアの行動に慣れていく自分を自覚する。