月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

開花


 ティナは精霊王ルーアシェイアから月下草の育て方を見せてもらった。

(……これは……人間が育てるのは不可能なんじゃ……?)

 ところが、普通の植物の育て方と全く違っていたため、ティナは困惑してしまう。

「あの、ルーアシェイア様……。せっかく教えていただいたのに申し訳ないのですが、私に栽培は無理だと思います……」

《何故だ?》

「あ、いや、私はルーアシェイア様のような不思議な力もありませんし……」

 ティナは正直に考えていることをルーアシェイアに伝えた。
 精霊王であるルーアシェイアが持つような特別な力が、自分には無いからだ。

《うーむ。おかしなことを言うな。私の力も其方の力も同じだろう?》

「へ?」

 しかし、ティナの考えとルーアシェイアの考えは違うらしい。

《私の力も其方の力も、ラーシャルード様から与えられた力なんだ。其方にも種を芽吹かせることが出来るはずだ》

「あっ……!」

 ルーアシェイアの話を聞いたティナの頭に、ノアから教えられた言葉が甦った。

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