辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
 帰りの高速フェリーに乗り込むと、長く海に入っていた疲れで眠気に襲われ始めた。

 うとうとしているうちにいつの間にか眠ってしまい、「和泉、着いたぞ」と声が聞こえ、ハッとして頭を起こす。

 コウさんの肩に寄りかかっていたようだ。

「ごめんなさい。重かったですよね」

「いや、そんなことはない。ところで、今夜行きたいところがあるんだが、一緒に行かないか? 疲れているようなら無理にとは言わない」

「どこへ……? 今夜出港ですよね?」

 今夜二十三時にクルーズ船はケアンズを出港する。

 現在、十七時二十分になろうとしていた。

「どこへ行くのかは内緒だ。それまでには戻るから安心してくれ」

「内緒……」

「だが、きっと楽しんでくれると思う。今日の礼だ。さてと、降りよう」

 乗客が出口に向かっており、コウさんは座席を立ち、私も腰を上げる。

「お礼だなんて、昨日は私も助かりましたし」

 歩き始めた彼の背を追うが、ふいにコウさんが振り返る。

「ひとりよりふたりの方が楽しいから、一緒に行ってくれるとうれしい」

「コウさん……」

 魅力的な笑顔を向けられて、思わずコクッとうなずいていた。



 シャワーを浴びて身支度を済ませてから、急いでコウさんとの待ち合わせのレセプションカウンターの前へ向かう。

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