辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
 祖父母がいる設定がすっかり頭から抜け落ちていた。コウさんに心を許し始めているので、嘘をついているのが心苦しく感じる。

「じゃあ、行こう。迎えの車を待たせている」

 迎えの車……?

 その車がなんなのか聞く間もなく促されてデッキに出て、外へ向かった。

 まだ外は明るいが、そろそろ日没時間になる。

 待っていたブルーの車の側面には、ツアー会社の名前が大きく入っていた。

 私たちはその車の後部座席に乗り込んだ。

「コウさん、オプショナルツアーの視察ですか?」

「鋭いな」

 車が動きだし、クルーズ船から離れていく。

「側面にツアー会社の名前があったので」

「まあ楽しみにしていてくれ」

 コウさんは私を驚かせたいみたいなので、あえて聞かずにいよう。

「あ! そうだ」

 トートバッグから日焼けした後のローションを出してつける。シャワーを浴びた後も塗ったのだが、思ったより焼けたみたいで肌がヒリヒリしている。

「コウさんもつけた方がいいと思います。赤いというよりはすでに黒くなっていますね。手を出してください」

 瓶から彼の手に出してあげようとする。

「和泉が塗ってくれないか」

「私が……?」

 思わずクスッと笑う私に、コウさんが首をかしげる。

「コウさんって、彼女さんになんでもやってもらっているんですね」

「大人をからかうなよ」

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