辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
「はい。仕事で来られなくなったと。ていよく断られたのかもしれません。でも、安心しました。顔も知らない人と旅の間ずっと過ごすなんて、少し想像しただけで憂鬱でしたから。父が知ったら怒るでしょうけど……」

 怒り心頭の父の顔を思い浮かべて、ブルッと震えがきて体に腕を回す。

「お見合い相手の顔を知らない?」

「父から封筒に入った写真を受け取ったけど、先入観を持たないように見ていなくて」

「政略結婚を決意したのはホテルグループのため?」

「はい。ずっと父の手助け……というにはおこがましいですが、役に立ちたいと思っていました。大学生になってから、ホテルのあちこちの部署でアルバイトをしたんです。入社したらその経験を役立てられるように。だから経営がうまくいっていないと知って、決心したんです」

「そうだったのか……」

「相手は来られなかったですが、この旅はとても……」

 コウさんのおかげで、二十二年間の中でこの旅はとても、いや、一番楽しいものになった……そう言いたかったがのみ込む。

「とても?」

「……思いがけず楽しかったです」

 初めてコウさんに会ったときを思い出して、自然と笑みが浮かぶ。

「自由を謳歌したって感じで。この政略結婚がだめになっても、父はまた別の御曹司と結婚させようとするはずなので」

 初めて男性を好きな気持ちを知った旅だった。

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