おじさんフラグが二本立ちました
ーーーーー創立記念日
一月十七日は聖愛女学院の記念式典のある日
高等部三年生にも出席が義務付けられている
「みよちゃん。平気?」
加寿ちゃんは前の席から振り返って心配そうに見てくる
「天気の所為かな、調子悪い」
「あーね」
式典は終わったものの
講演会や発表会と続くから不安になってきた
「先生に言って早退する?」
「ううん。大丈夫だよ」
「じゃあ無理はしないこと」
「うん」
彬と別れたことは加寿ちゃんにも伝えた
私のことがあっても竹田さんとの付き合いは順調らしく
心配することでもなかった
「講演会までカフェに行こうか」
「賛成」
聖愛大学に進む三年生は大学キャンパス内の学食やカフェに入れる
少しフラつく身体を踏ん張りながら
高等部より低い位置に広がる大学キャンパス内へ足を向けた
学生達の考えることなんて同じのようで
新設されたカフェは混み合っていた
「あ、あそこ、空いたから座ってて
私がコーヒー買って行くよ」
「ありがとう」
気を利かせてくれた加寿ちゃんのお陰で
陽の当たる窓際の席に座れた
そこから始まったお喋りはもちろん彬のことから
それに水を差したのは
「ねぇ彼女たち。ここいいかな」
コーヒーのトレーを持っている男性だった
「「(最悪)」」
同時に心の声が漏れる
「どーぞ」
素っ気なくそう言って視線を外したけれど
見えた格好に厄介者の臭いを嗅ぎ取った
胸元の開いた白シャツから見える数本の金のネックレス
キラキラの腕時計と違和感しかない真っ白な歯
なにより、日サロから出てきましたと言わんばかりの小麦色の肌に毛先が傷んだ茶金の髪は
二人共通の最も嫌いなタイプ“チャラ男”
香水も浴びたのかと聞きたくなるほどキツく臭ってきて、気持ち悪さが込み上げてくる
講演会もすっぽかして此処に根を下ろすつもりが
そうも言ってられなくなった
「「(出よう)」」
立ちあがろうとトレーを持つと
チャラ男の顔がこちらを向いた
「ねぇ、俺、イタリアンのオーナーなんだ」
「「だから?」」
「えっと、良かったらご馳走したいなって」
「「・・・は?」」
突然話しかけてきて、突然誘う?
イタリアンとチャラ男というキーワードで繋がったのは【トラットリア壱】を数店舗経営しているオーナーの藤原という名前だった
確か聖愛の近くに一号店があるけれど
最近では味が落ちたと閑古鳥が鳴いている
リーズナブルで割と好きだった店なだけに
自信たっぷりの話し方がイラッとした
「私、調子が悪いの、アンタのイタい飯食べたら倒れるじゃん。お断り」
今度こそトレーを持って立ち上がると
「何?イタい飯って」
追いかけてきたチャラ男に肩を掴まれた
「ちょっと触んないでよ」
肩の手を振り払おうとした手を
掴まれたことで距離が詰まる
その力の強さに手首が悲鳴を上げた
「痛~~い」
加寿ちゃんが「助けてー」と声を上げたから
学生達であっという間に人集りができた
苛々した気分に頭に血が上って
呼吸が早くなると同時に
喧騒が遠くなってフワリと景色がズレた
「キャァァァ、みよちゃんっ」
焦った加寿ちゃんの声を聞きながら
足に踏ん張りが効かなくなった