Cherry Blossoms〜甘美な恋の罠〜
アナフィラキシーショック
翌日の朝、桜士は家で朝ご飯を作っていた。今日も病院での仕事だ。

「朝ご飯を作るなんて、久しぶりだな」

卵を焼きながら桜士は呟く。公安警察の時は、作る時間はおろかまともに食べる時間すらもないのだ。こうしてゆっくりできる時間は珍しい。久々の料理ができる時間に桜士の頰が緩む。

卵焼きを作りテーブルに持って行くと、そこには焼き鮭と納豆、漬物に豆腐にほうれん草のお浸し、そしてワカメともやしの味噌汁が並んでいる。栄養バランスの取れた朝ご飯である。

炊き立てのご飯をお茶碗によそい、食べ始める。どこからか鳥の鳴き声が響き、穏やかな朝の空気が伝わってくる。

「四月一日先生は、今頃どんな朝ご飯を食べているんだろうか」

ファミレスでは、しばらく泣いていたがその後は何もなかったかのように笑い、大盛りのマグロの叩きご飯セットと、デザートに林檎のアーモンドクラフティとチョコレートのムースを幸せそうに笑いながら食べていた。おいしそうにたくさん食べる人を見ていると、桜士の心も幸せになってくる。
< 11 / 46 >

この作品をシェア

pagetop