Cherry Blossoms〜甘美な恋の罠〜
紛争地域に行った際、のんびりと料理を作るなど当然できるはずがない。すぐに食べられる軍用缶詰めがほとんどだ。

「でも、日本に帰国している間は料理をしたいんです。父と、中学生の双子の弟においしいものを食べさせてあげたくて!」

彼女は一年の多くを海外の、それも危険な場所に行くことが多い。いつ命を落としてもおかしくないのだ。家族との限られた時間を大切にしたい、その気持ちが桜士の心に伝わっていく。

「あの、僕でよければ教えますよ?料理」

「えっ、いいんですか?」

「はい。簡単な家庭料理からちょっとおしゃれなものまで。料理作るの好きなので」

「ありがとうございます!!」

一花は嬉しそうに笑う。花が咲いたような笑顔に、桜士の胸はキュンと高鳴るのだ。

「何か作ってみたい料理はありますか?」

「私、肉じゃがを作ってみたいです!」

それは、嘘偽りで作られた人生を歩んでいる桜士にとって、幸せで温かい時間だった。







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