巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。
20 廃神殿の真実
──ふいに目が覚めると、はじめに目に飛び込んできたのは毎日のように見ている天井だった。
顔を窓に向けると、カーテンの隙間から光が漏れていて、朝焼け色だった空が青く染まっていくのが見える。
(……ああ、もう朝か……。そろそろ起きて朝ごはんの準備しなきゃ……)
代わり映えのない朝の様子に、のそのそと起き上がった私は伸びをしながら盛大にあくびをする。そしてしばらく微睡んだ後、何かを忘れているような気がして「あれ?」と思う。
「──あ……っ!! エル!!」
あまりにもいつも通りの光景だったからすっかり忘れていたけれど、私は意識を失う前にあった出来事──テオが雇ったらしい盗賊達に子供達と一緒に拐われた事や闇魔法を掛けられそうになった事、久しぶりに姿を現した悪魔に助けられた事を思い出す。
(あれって夢じゃない……よね? 現実だよね……?)
あまりの予想外の出来事に、もしかするとエル会いたさに見た夢なんじゃないかと考える。だけど、闇魔法に身体を侵食された時の悍ましさやエルの威圧の恐ろしさを、いくら夢とはいえ想像力が貧困な私に再現できる筈もなく。