巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。
「ああ、そうらしいな。礼拝じゃなくて視察みたいだけどな」
「王太子殿下と言えば、宮中の人間から恐れられてるって噂らしいけど、そんなに怖い方なのかねぇ」
「上に立つ人間なら怖いぐらいが丁度良いんじゃねぇか?」
「そう言えば、最近帝国から飛竜を賜ったんだって?」
「へえ! 貴重な飛竜を賜るなんて凄いじゃないか!」
「この国の王太子と帝国の皇太子は友人の間柄らしいからな」
「帝国みたいな超大国と友好的な関係を築けるのはいいことだよな」
「違いねぇ!」
(……王太子殿下か……お昼に神殿で会った人だよね……顔は見えなかったけれど、佇まいからして格好良かったような気がする……)
商隊の人達の話を聞いている内にうとうとと微睡んで、段々睡魔がやって来た。頭がぼんやりとして思考が纏まらない。いつもなら眠っている時間だから、体内時計が働いてくれたのだろう。
──そうして、にぎやかな声が聞こえてくるにも関わらず、私は深い眠りについたのだった。