巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。
32 自覚(エル視点)
サラと出逢い、法国の話を聞いてから、僕は時間が許す限り彼女に会いに行った。
彼女が司祭から教えられたという法国の情報はかなり有用だったし、情報交換とは言え彼女との会話はとても楽しく有意義で、僕にとって何ものにも代えられない大切な時間となった。
サラから提供された情報をヴィクトル達にも伝え、彼女の育ての親でもある司祭の行方も調べるように指示を出す。そして可能であれば身柄を保護するようにとも。
神殿への介入は越権行為だが、それでもそのように指示したのは僕がサラを安心させてあげたいという気持ちと、かの司祭が法国の中枢を知っている理由が知りたかったからだ。
法国の情報規制は徹底しており、司教でも中々謁見できないと言われている教皇の顔を知っている程、高位の人物が何故辺境の神殿で司祭をやっているのか……。
──そして気になることがもう一つある。サラの出自だ。
サラはどう考えても普通の巫女見習いではないと思う。これはあくまで勘でしか無いけれど。
彼女と会う時、僕は彼女の行動一つ一つを注意深く見ていた。美しい姿勢に流れるような所作、無駄のない動きに記憶力の良さ──。