巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。

「フフフ、わかるわぁ。そう言えばこの神殿は何の神様を祀っているの?」


「それなんですけど、私にもよく分からなくて。アルムストレイム教の神殿で無いことは確かなんですけど」


 ソリヤの神殿とはまた違った様式の祭壇だから、別の神様だろうとエリーさんに伝えると、エリーさんの顔が少し真剣になる。


「どこかの国で聞いた話かは忘れちゃったけど、昔は悪魔を祀っていた神殿が存在したらしいのよ。そこで夜な夜な怪しい儀式を行ったりしてね。若い女性が何人も犠牲になったって噂があるの。もしかしてこの神殿がその悪魔を崇拝していた場所の可能性が……」


 エリーさんの話を聞いてギョッとする。悪魔を信仰するなんて、とても正気の沙汰じゃない。


 悪魔信仰について詳しく知らないけれど、悪魔を崇拝して悪の力を利用し世界を滅ぼそうとか企むのだろう。生きていると辛いことや悲しいこともあるから、この世を憎む気持ちもわかるけど、世界を滅ぼした後はどうするんだろうと思う。

 滅んだ世界で生き残って幸せになれるのかな? 文明が滅んだら自分たちも不便になるのでは? 農家の人がいなくなったらご飯どうするんだろう……。

 そんな事を考えていたら、エリーさんが慌てた様子で声を掛けて来た。


「サラちゃん! ごめんなさい! そんなに怖がるなんて思わなかったの! もうここから出ましょう? ね?」


 どうやら私はエリーさんを勘違いさせてしまったらしい。ただ考え事をしていただけなのに申し訳ない気持ちになる。


 祈りの間から出た私達は、一緒に朝ごはんの準備をすることにした。

 商隊の人たちも起きてきて、皆んなで朝ごはんを食べたら早々に出発だそうだ。


 そうして野営の片付けをして準備を終わらせると、再び荷馬車に乗り込んだ。

 私は小さくなっていく神殿跡を眺めながら、子供達の待つ孤児院へと、思いを馳せるのだった。
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