巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。

「時間が無いと言っているでしょう? 後でこちらから使いの者を寄越しますから、貴女はこのまま馬車に乗って下さい」


「そんな!? ちょ、ちょっと……!」


 問答無用というようにバザロフ司教が私の腕を掴むと、優しげな見た目に反した強い力で王宮の廊下を突っ切っていく。


(どうして今日に限って誰も通らないの……?)


 いつもなら誰かしら人とすれ違うはずの廊下だけれど、今は人の気配が全く無い。


(──エル、ごめん……! また迷惑をかけちゃう……!)


 誰か一人でもいいから王宮の人がいたら──と考えた私が甘かった。どうして自分はこう考えが足りないのだろう。


 ──結局、私は誰ともすれ違うこと無く、神殿本部へ連れて行かれたのだった。
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