巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。
先程までの凄みが無くなり、すっかりいつもの調子に戻ったお爺ちゃんが、私に笑顔を見せる。
この短い時間で、私は今まで知らなかったお爺ちゃんの顔を沢山見ることになった。
私は未だにお爺ちゃんの過去を、名前以外何も知らないけれど──それでも、一緒に過ごしてきた時間の中で、お爺ちゃんの優しさや厳しさ、温かさを沢山知っている──ならば、今の私にはそれだけで十分だ。
「──うん! 早く子供達の処へ戻ろう! あ、今はね、離宮に住んでいるんだ! すごく豪華でお爺ちゃん驚くかも!」
「そうかそうか。そりゃ楽しみだな! でもな、俺がいた部屋も凄かったぞ!」
「むう! でもでも、離宮の直ぐ側に森があって、すっごく広くてね──……」
──まるで一年間の空白を埋めるように、私とお爺ちゃんはずっと言葉を交わし続けた。
そして二人一緒に、エルが待つ場所へと歩いて行ったのだった。