巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。

 それから子供達は準備を終わらせて布団に潜り込むと、目をキラキラさせながら私が絵本を読むのを待っている。

 何度も何度も読んだ絵本だけれど、子供達から文句が出たことは一度も無い。

 私はそんな子供達のために、良く聞こえるようにゆっくりと絵本を読み始める。



「昔々あるところに──」


 そうして本を読み終える頃には、子供達は眠りに落ち健やかな寝息を立てていた。

 私は子供達が寝付いたのを確認すると、そっとベッドから出て自分の部屋へと戻る。


 古い木のドアを音が立たないようにそっと開けると、ベッドと机、小さい本棚しかない質素な部屋がある。ここが巫女見習いである私の部屋だ。

 巫女見習いと言ってもこの孤児院には巫女がおらず、この孤児院で育った私が見様見真似で巫女の仕事をしているに過ぎない。


 私は本棚から一冊のノートを取り出すと、その内容を確認する。


「……やっぱり無理かー」


 ノートにはこの孤児院の収支が書かれており、どう見ても金銭的に余裕が無いのが見て取れる。今でもかなりギリギリだ。子供達の服を新調するにはとてもじゃないけどお金が足りない。
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