巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。
初めて聞く声のはずなのに、何故か懐かしい気持ちで胸がいっぱいになるけれど、その懐かしい声は次第に聞こえなくなり、大切だったものは空気に溶けるかのように消えてしまう。
「……っ!! やだ……!! いかないで……!!」
大切なものに向かって一生懸命手を伸ばすけれど、手は虚しく空を切る。
「サラっ!」
──だけど、大好きな声に名前を呼ばれたかと思うと、空を切った私の手を大きな手が包み込む。その少し冷たい感触に、私は夢から現実に連れ戻された。
「……ん……? エル……?」
火照った身体にエルの手の冷たさは心地よく、寂しさでいっぱいだった心が、手を握られたことで落ち着いていくのがわかる。
薄っすらと目を開けると視界がぼやけていて、頬を伝う涙の感触に、自分が夢を見て泣いていたのだと気付く。
段々視界がはっきりしてくると、そこには心配そうな表情をしたエルと、心配の中にも少し怒りをにじませた表情のお爺ちゃんがいた。
「……あれ? ここ、どこ……?」
* * * * * *
目覚めた私は、庭園で倒れた私をエルが寝室へ運んでくれたのだと教えて貰う。