巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。
エルの腕の中で、すやすやと健やかに眠るアレンの顔色は、本来の桃色に戻っていたのだ。
「エル、アレンに何かした?」
「ええ、魔法でアレンの恐怖心を抑えました」
何でも無いようにエルがサラッと言う。
「え、それって凄いことなんじゃ……?」
「闇魔法は精神に作用出来ますから。今回は脳にある扁桃体という器官に干渉して、活動を抑制したのです」
エルの言う扁桃体とは、不安や恐怖といった原始的な感情の中枢となっている器官なのだそうだ。
「記憶を消すと脳に負担がかかりますからね。それに恐怖記憶は危険の予知・回避に必要な能力ですので、消してしまうと事前に危険を予想し、身を守ることができなくなってしまうのです」
だからエルは無理に記憶を消すのではなく、闇のモノに対する恐怖反応を抑えるよう、魔法で扁桃体に働きかけたのだそうだ。
「すごい! すごいよエル! じゃあ、子供達はトラウマを抱えなくても良いんだね!」
喜んだ私はエルにお願いして、アレンと同じように子供達に魔法をかけて貰った。