「Of My Disteny」ー手、繋ごうー
深呼吸をして呼吸を整える。

よし!っと心に決めたら、手をグーにしてコンコンッと2回ドアをノックした。

「はい」

一ノ瀬くんの声が聞こえる、一ノ瀬くんの部屋だから当たり前だけど。

「あの…っ、お風呂!私もう入ったから一ノ瀬くんもっ」

ガチャっとドアが開くと一ノ瀬くんが出て来た、手にはシャーペンを持ったまま。

「ありがとう、もうそんな時間だった?つい集中しちゃって気付かなかった」

「集中?何かしてたの?」

「うん、中間テストの勉強」

「中間テスト?ってまだ先じゃない!?その前に遠足もあるよ!?」

新入生歓迎が終わったばっかで、次は春の遠足がある。私からすると中間テストはまだまだ先だった。

「そうだけど、毎日コツコツが大事だし積み重ねが結果に繋がるしね」

めちゃくちゃしっかりしていらしゃる…基本一夜漬けの私とは大違い。
その手に持ったシャーペンは夢中になり過ぎた証で、それはすごく説得力があった。

「あ、やばい!早くお風呂入らなきゃ!教えてくれてありがとう!」

「ううん、よかった気付いてなかったみたいで」

「10時20分にはお風呂入って、10時50分にストレッチして11時には布団に入る予定だったんだ」

「そんなきっちり決めてるんだ!」

時間も分スケジュールで動くタイプなのか、一ノ瀬くんは。

本当すごくしっかりしてるなぁ…
でもそれぐらいちゃんとしないとこの学園でトップを取るのは難しいかもしれない。だって成績だって1つの評価なんだから。

「そうだよね、私もがんばるね!あんまり勉強得意じゃないからっ」

のんびりはしていられない。

一ノ瀬くんにあんまり迷惑かけたくないし、やれることはちゃんとやっておかないと!

そう意気込んだのに、それを吹き飛ばすぐらいあっさりした言葉が返って来た。

「しなくてもいいよ」

「え?」

完璧主義者っぽい一ノ瀬くんからそんな風に言われると思ってなくて、2回パチパチと瞬きしちゃった。

てっきり応援してくれると思ったから。

「え、でもそれだとトップには…」

「しなくてもいいと思うよ、俺は」
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