ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい
遥々来てもらって会わせないわけにもいかない。粧子は灯至を大叔母がいる縁側へと案内した。どうせすぐに帰るだろうと、粧子は高を括っていた。
これまで大叔母の元には槙島家からの使いが何人もやってきたが、まともに大叔母と会話が出来た者はいない。
「大叔母さん、お客様ですよ!!」
耳の遠い大叔母のために一際大声で叫ぶ。粧子の声を聞くと大叔母はゆっくりとした動きで後ろを振り返った。
いつもならチラリと見ただけで直ぐに元の体勢に戻っていくが、この日は様子が違った。
「吾……郎さん……?」
大叔母は呼吸を忘れたように、粧子の背後に見入った。頬は紅潮し、目には生気がみなぎっていく。
杖なしでは立つこともままならない大叔母が手を前に突き出しながらフラフラと歩み寄ってくる。粧子は慌てて大叔母に手を貸した。
ああ、何が一体どうなっているの?
「吾郎さん……貴方なの?」
「大叔母さん……?」
大叔母の視線の先には灯至しかいない。もしかして、灯至を吾郎だと取り違えている?
「悪いが俺は……」
「待って」
粧子は灯至が勘違いを否定しきる前に、彼を制した。灯至がなんだ?と目で訴えてくる。
大叔母に生きる気力を取り戻してもらうための妙案をたった今閃いてしまった。