ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい
「電話で予約した。槙島だ」
「槙島様、お待ちしておりました」
灯至が予約してくれたのは、ビジネスホテルでもなければ、大衆向けのシティーホテルでもなかった。飛び入りで泊まるにはもったいないハイエンドホテルだった。
カウンターで手続きを済ませ、カードキーを受け取る段になってはたと気がつく。案内係がカウンターの上に置いたカードキーはひとつきり。どういうことかと灯至を見上げる。
「スイートは空いていなかった。ダブルルームで我慢しろ」
いや、そこじゃない。論点がずれている。
シングル二つでもなく、ツインでもなく、ダブルルームとなればベッドはひとつしかない。普段は別々の寝室を使っている夫婦が密室に二人きり。それが何を意味するか。新妻は察しが良かった。
もしかして……このまま灯至さんと……?
案内されたダブルルームは、一晩の仮宿としては十分な広さがあった。
夕食はまだだったのでルームサービスでサンドウィッチを頼んだが、それもろくに喉に通らない。