ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい

「ダメだな。この先は完全に通行止めらしい」

 灯至は苛立ったように大きなため息をついた。順調だった行きとは打って変わり、帰りは大きな渋滞に嵌まってしまった。
 カーラジオによると、この先のジャンクションでタンクローリーの横転事故が発生しているらしい。高速道路は上りも下りも通行止め。通行止めが解除される見込み時間も今のところ発表されていない。
 灯至は最寄りのパーキングエリアへと車を進めた。

「この辺りで適当に宿を探す。必要な物を買って戻ってこい」

 駐車場に車を止めた灯至はそう言うと、電話を掛けに車の外へと出て行った。
 日帰りのつもりでいたのに、まさか泊まることになるとは。こうなると墓地で抱き上げられた時よりも動揺してしまう。
 ひとまず灯至の指示通り、パーキングエリアの売店で必要そうな物を買った。代えの下着と化粧水のセット。あと、小腹を満たすための菓子とお茶だ。トイレに寄ってから車に戻ると、灯至も同じように買い物を済ませて待っていた。

「予約が取れた。行くぞ」

< 39 / 123 >

この作品をシェア

pagetop