ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい

「灯至さんは……年下なのにリードしてくれる男らしいところもあって……」
「うんうん」

 いつのまにか栞里も混ざり、一緒に相槌を打っている。

「口は悪いし、いつも命令口調だし、すぐあんたって呼びますし……」
「え!?」
「でも、私にとっては最良の人です」

 灯至は秘密を守りたいなら結婚しろと言った。秘密をバラされたくなかったらと脅すこともできたのに。
 この二つは似ているようで大きな隔たりがある。
 秘密を守ると言ってくれた灯至と結婚した自分の判断は間違っていなかったと自信を持って言える。

 沢渡家の居間はシーンと静まり返り、栞里と麻里は顔を見合わせた。

 あ、れ……?私、変なことを言ってしまった?

「あ、すみません。私ったらつい……。飲み過ぎですよね」

 お酒の力も相まって、饒舌になってしまったようだ。言わなくてもいいことまで暴露してしまった。

「ううん。粧子さんがこんなに惚気てくれると思ってなくてびっくりしただけ」
「もっと聞きたい!!」

 その後も三人は結婚式の話や、お店の話、各々のパートナーの愚痴などを酒の肴にしながら、歓迎会を楽しんだ。

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