ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい
「明音さんは?」
「鷹也……ええっと、近所に住んでる友達と飲みに行ってます。だから、今日は女子会です」
沢渡家には槙島家の後継者の座から退いた明音が居候していると聞いていたが、今日はあいにくと留守らしい。
明音とは結婚式で顔を合わせたのが最後だ。粧子と灯至の結婚を複雑な表情で見守っていたっけ。
「それでは新しい従業員の歓迎を祝して……かんぱーい!!」
栞里が乾杯の音頭をとり、それぞれがグラスを掲げた。
「張り切ってたくさん作っちゃったので、どんどん食べてくださいね」
麻里から取り皿を渡された粧子はどれから食べようか熟考した結果、一番近くにあったきゅうりと鶏肉の和え物に皿に取り口に運んだ。
美味しい……。
麻里の作る料理は文句なしに美味しかった。女性しかいない飲み会だからなのか、ゆるっとした空気感が粧子から警戒心を奪っていく。
「粧子さんって結婚して何ヶ月でしたっけ?」
「三ヶ月です」
「粧子さんから見て旦那さんってどんな人なんですか?私、ほとんど面識ないんですよねー」
麻里は好奇心を隠し切れない様子で、グイグイと粧子に迫った。
どんな人かと尋ねられ、粧子は改めて灯至について考えてみた。