ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい
もしかして……遊園地がお嫌いなのかしら……?
ブラックコーヒーを飲む端正な横顔からは、上手く感情が読み取れない。
粧子は今更ながら灯至のことをよく知らないということに気がついた。
何が好きで、何が嫌いか。基本的なことを知る前に彼と結婚してしまった。
恋愛における最終到達地点が結婚ならば、粧子はすでにゴールテープを切ってしまっている。この先どうするべきなのか、粧子には検討もつかない。
「あの……今日は私の行きたいところに連れてきていただいたので、今度は灯至さんの行きたいところに行きましょう。どこか行きたい場所や思い出の場所はありますか?」
「特にない。あんたのところと違ってうちは家族という概念が希薄だからな。一家で行楽地に出掛けるようなこともなかった」
灯至はどこか居心地が悪そうに、家族連れを目で追った。
慣れないところに来ていたから妙に静かだったの……?
「そもそもこの何年かは日本にいなかった。これといった思い出は残ってないな」
「そうなんですか!?」
「高校はイギリスの寄宿学校、大学はアメリカだったからな。在学中にアメリカで起業もしたし、仕事を任せたいから戻ってこいと言われなければそのままアメリカで暮らしていただろう」
パーティーの時、海外からの賓客に流暢な英語で対応していたのはもともと英語圏での生活が長かったせいなのかと合点がいく。