LIBERTEーー君に
16章 生き生きと……
翌日、ミヒャエルの順番は午前最後4番目だった。

ユリウスとエィリッヒは繊細な貢の演奏とは違い、癖強めのミヒャエルの演奏が審査員に何処まで評価されるのか、気がかりなようだ。

実践を兼ねた連日の練習が功を奏したのか、ミヒャエルは緊張どころか、「審査が楽しみで仕方ない」とリラックスモードだった。

詩月は心臓に毛が生えている奴とは、まさにコイツのことだと思った。

「図太いんだな」

「あれだくけ練習したんだ。それに、お前のピアノ伴奏だ。鬼に金棒だろ」

「通過云々を考える暇がないくらい気持ち良く演奏させてやる」 

「よろしくな」

この感じ好きだな、この緊張感がいいと詩月は思う。

貢の時よりも気分が上がった気がした。

待ち時間の間、窓から見える風景を観て過ごす。

風に波打つ水面、そこに映る緑、ブラームスが数年を過ごし、作曲した土地。
< 165 / 258 >

この作品をシェア

pagetop