LIBERTEーー君に
「だからこそ、不安なんだろ。実際、俺よりも上手いヴァイオリン演奏をしたコンテスタントが何人もいた。貢だってそう思っただろ?」

「そうだな。俺より上手い奏者は何人もいた。審査員も人だから、多少、評価に好き嫌いの差はあるのかもしれないと思ったけれど……」

「僕はそれがファイナルでマイナスになるとは思わない。評価の数字より、何より自分自身が今日の演奏は会心の演奏だったと言える演奏が大事だ」

詩月の思いが貢とミヒャエルに、どこまで伝わったのかはわからなかった。

ファイナル審査は10名で競う。

ともあれ、詩月とユリウス、エィリッヒの懸念をよそに、貢とミヒャエルはセミファイナル通過し、ファイナル進出を果たした。

ファイナルの審査はオーストリア国内からコンクール側が選定したオーケストラの演奏でおこなわれる。

コンテスタントは申請した課題曲の中から、指定された曲の第1楽章を演奏し、入賞は3名~5名だ。
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