LIBERTEーー君に
17章 胸焦がす演奏と心揺さぶる激しさと
貢はセミファイナル1日目の自分の後のコンテスタントの審査から、ミヒャエルはセミファイナル2日目の午後からの審査を聴いた。

貢とミヒャエルの気持ちは案の定、セミファイナルを通過したにもかかわらず、晴れなかった。

詩月は貢とミヒャエルに「評価はどうあれ、ファイナリストになったんだ」と励ました。

「入賞や優勝は気になるところだけれど、先ずファイナルの演奏を精一杯演奏することだ。思い切り楽しんで演奏することだ」

貢とミヒャエルは頷きながら、納得した風には見えなかった。

「結果は後に着いてくるものだ。評価で獲得するポイントは、どんなに透明性のある審査でも、審査員の采配しだいだ。自分自身の最善の演奏ができるかどうかが大事だ」

詩月は自分の思いを訴えた。

「セミファイナルの演奏は確かに、思った以上に獲得ポイントも評価も高かったし、観客の受けもよかった」

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