LIBERTEーー君に
19章 「Ich weiß」(わかってる)
ブラームスコンクール、ファイナル当日20時過ぎ、詩月のスマホに着信があった。

詩月はヴァイオリンの手入れをしている手を休め、電話に出た。

ーー2ヶ月間、お疲れさま

「ありがとう。入賞できてホッとしたよ。正直言うと、結構プレッシャーだった」

ーー貢は3年もコンマスをやってたから、特に大変だったでしょ

「まあね。練習初日の演奏は兎に角、引くほど悲惨だったからな」

ーー貢自身、危機感があったから周桜くんを頼ったのよ。貴方しか思いつかなかったんだわ

「真意は兎も角、悲壮感は感じた。2ヶ月、安坂さんはよく頑張ったなと思うよ。僕はかなりキツイことをズバズバ言ったんだけど」

ーー独特な練習で着いていくのに必死だったんでしょうね。随分前に、貴方が街頭演奏しているときに貢が言ってたの。練習室に籠って弾くだけが練習ではない、こういう練習方法もあるんだなって
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